短編-茨姫-

空想物語

ここは古い古い植物の這う遺跡。
茨姫と探究者が出会う短編物語。
空想世界へ誘えますように。


【小休止】


【茨姫】(前編)
 
 木々の中にひっそり潜む植物の這った遺跡。
 その深い深い奥底に眠る姫。
 一人寂しいと涙を流すことも。

 私は呪われている。
 私は棘に囲まれている。
 時に傷つけ、自分も傷つける。
 そのせいで、いつも周りに人はいない。
 そして他人との交流を切り捨て遺跡に閉じ籠った。

 5年前・・・・・・。
 王国で暮らしていた時、1人の女性とすれ違った。
 
 女性に
「あの…待ってください」
 と、声をかけられた。

 私は聞こえないふりをして、そのまま通り過ぎた。
 女性は焦った様子で振り返っていた。
「あの女性の名前、知りたかったな…」
 ぼそっと声を出し女性は去って行った。

 現代に戻り、女性は探究者になった。
 探究者名【アルラウネ】と付けた。

 この王国ナルプトゥの伝説を調べている。
 伝説【茨姫】のことを。

 茨姫は森の奥にある、遺跡に眠っていると伝えられている。
 アルラウネは本当に茨姫がいるのか、探究心を沸かせていた。
 ナルプトゥ王国から茨姫を見つけて欲しいと頼まれた。

 資料によると、茨姫の名は【ドリアード】という名前らしい。
 ドリアードは引っ込み思案で臆病で怖がりな暗い暗い女性・・・。
 少ない情報しか記されていなかった。

「茨姫の資料はこれしかないのですか?」
 
 書庫にいる従者に聞いたが、
「申し訳ございません。茨姫に関する資料はこれだけしかありません」

「わかりました。ありがとうございます」
と従者に一言言って、森の中の遺跡を探す準備をしに用意された部屋へ向かった。
 
 用意された部屋にはナイフや双眼鏡、食料など荷物をリュックに詰める。
 詰めた後、明日の旅立ちを楽しみに眠りについた。


【小休止】


【茨姫】(後編)

 朝の旅立ちが来た。
 アルラウネは森へ向かう。

「森の中はどっちに進んでいるのか、分からなくなる。」
 方向感覚が狂うと遺跡を探すのに苦戦していた。

 森の中を歩いていると、木に蔦が巻き付いてカーテンのようなところが見えた。
 蔦のカーテンを掻き分けて覗くと茨の這った古い遺跡を発見した。
「この遺跡は、もしかして!」
 アルラウネは期待をしながら、遺跡に探索へと入った。

 遺跡に入り階段を一歩一歩下っていくと茨の門を見つけた。
 茨を切り門を開くと、そこには葉で作られたベッドに寝ている女性がいた。

「見たことある人…あなたは…誰…?」
 アルラウネは驚きと不安がありつつ女性に尋ねた。

「私はドリアード…。」
 ドリアードは寝ぼけながら答える。

「あなたがドリアードでしたか。王国ナルプトゥの王様が待っていますよ」
 王国ナルプトゥからの頼まれたということをドリアードに告げた。

「私はここに住んでいるから何も問題ないと王様に言ってください」

「不便ではないですか、ここ?」

「便利ですよ。誰もいない、何も命令されない。静かな場所…」

「そうなんですか、そしたら私の家なんてどうです?」

「んー。静かな場所?」
 誰かにまた見つかるのならとドリアードはアルラウネに聞いた。

「静かな場所ですよ。街外れに家があるので」
 アルラウネは笑顔でドリアードに答えた。

「じゃあ…お世話になる」

「遺跡から出て帰りましょ、茨姫様」

「…ドリアードと呼んで」
 アルラウネに頬を膨らませながら呟いた。

「ドリアード、分かりました。私のことはアルラウネと呼んでくださいね」

「わかった、アルラウネ」
 アルラウネはドリアードの手を取って、遺跡を抜け出し家へ向かう。

「ここが私の家です。狭き所ですが入っててください」

「ありがとう、お邪魔します」

「私はこれから王様にドリアードが居たことを報告してきます」

「お城には帰らないと王様に伝えてね」
ドリアードはアルラウネに強い意志を頼み、寝込みに入った。


【小休止】


【最後に】
・最後まで読んでいただきありがとうございます!

・マイペースなドリアードと探究するアルラウネ。
静かに穏やかに縛られない暮らしができたらいいなと思います(*’▽’)

・空想物語は不定期に更新していきます。
楽しみに待っていただけると嬉しいです。
お気軽に感想や修正点などのコメントしていただけたらと思います(^^ゞ

・ぜひ、今後ともお付き合いをよろしくお願いします。
空想世界へまたのお越しをお待ちしております<(_ _)>

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