執事の書庫

空想物語

執事のことを記した物語が置いてあるところ。
書庫にあるすべての話は、空想でしかない。
執事がどんな日々を過ごしたのか、気になるものだ。


主様とロッカーに隠れる執事

「やばいっ!人来る!」

焦った主様は、私をロッカーへ詰め込んだ。



「主様、いきなりどうしたのです?」

私は主様に問いかけた。

「しょうがないだろ。隠れるとこが無かったんだから」

私にムスッと視線をそらして怒っていた。

「こっち向いてください、主様」

主様の顔を両手で私の方に向けた。

「なんだ…//」

主様は照れてしまい、赤くなっていた。

「かわいいのですね、主様は」

いたずらに微笑みかけた。



「この中、狭い」

冷静になった主様は言った。

「良いのですよ、狭い方が主様の体温が感じられますもの」

私は囁いてみた。

「こんな時に、何を言っておる!」

主様は怒りながらも照れていた。

「冗談ですよ、主様。そんなに慌てないでください」

耳が赤くなっているのを見ながら、落ち着くように言った。

「慌てるだろ、ロッカーだぞ。狭いのだぞ」

狭いロッカーに文句を言っていた。


執事服を着るなんて聞いてないのですが

「なぜ私が執事服を着なくてはいけないのですか…?」

私は雇い主へ聞いた。

「ごめんね。これも仕事だから」

雇い主は言った。



「いつ、そうなったのです?」

私は気を落ち着かせて聞いた。

「昨日くらいかな、あはは」

雇い主は笑いながら言った。

「あははじゃないですよ!

やるなら早めに言ってくださいと何回言わせるのですか」

笑う雇い主へ詰め寄り、いつも言っているのにと怒った。

「ごめんね。今度は言うから」

雇い主は、詰め寄った私の耳元で囁いた。



「んっ…今度はいつになるんですか…//」

私は驚いて、不意に声が出た。

「可愛い声だね。今度は今度だよ」

いたずらに雇い主はニヤリとした。

「本当に言ってくださいよ。言ってくれなければもうしないからね」

冷静になり私は念を押した。

「悪かった。言うように気をつけるよ」

雇い主は反省したようだった。


君の記憶にある姿は俺に着こなせるだろうか

「魅力あるあなたを、さらいに来ました」

俺は玄関で片膝立てて、宣言した。



「何しているんだ、零」

ぽかんと状況が分からない感じだった。

「執事姿を前に見たいと言っていたではないか」

少し口を尖らせ拗ねてみた。

「先日行った屋敷は大きく、従者の方々も親切だったね」

頭を撫でられて、優しい声に包まれていた。

「うむ、親切な方たちでした」

拗ねるのをやめ、執事の続きを始めた。

「もう敬語はやめて零。いつもの零でいて」

敬語がくすぐったいのか、可愛いことを言っていた。



「雪様、今日は執事と主人の関係です」

俺は雪の冷たい手の甲にキスをした。

「くすぐったいよ。ありがとう」

雪は照れ笑いをしていた。

「お帰りになったばかりで、

引き止めてしまい申し訳ございませんでした」

俺は頭を下げた。

「ううん、零の顔見れて良かったよ」

雪は俺の顔を持ち、微笑んでくれた。

「もったいないお言葉です。ありがとうございます」

俺は雪の表情を見て、同じく笑顔になった。


お嬢様はデザートを召し上がった後に

「ケーキですよ、スーロお嬢様」

一口サイズに分けたケーキをお嬢様の口へ運んだ。

「あーん。いつもと同じように美味しいわ」

口の中へケーキを入れたお嬢様は喜んでいた。

「ありがとうございます」

お嬢様のお口に合い、礼を言った。



「まだまだデザートがあるのでしょう?

 持ってきてくださらない」

糖分がまだまだ足りなさそうに私に言う。

「かしこまりました、ただいま御用意いたします。スーロお嬢様」

ワゴンへ食器を乗せ調理場へ足を向ける。

「ティベリア、紅茶も頼むわよ」

私は呼び止められ紅茶の追加をされた。



「はい、かしこまりました。

 スーロお嬢様、少し失礼いたしますね」

私はスーロお嬢様の口の端に付いたクリームを指ですくった。

「なにしてんのよ、まったく」

お嬢様は照れて、フンっと顔を背けていた。

「綺麗なお顔に付いていたクリームを取っただけです」

私は指のクリームを見せ、いたずらに微笑んだ。

「うるさいわ。デザートを早く持ってきて」

お嬢様は恥ずかしそうに、早くと私は急かされていた。

「では、行って参りますね。少々お待ちください」

私はワゴンを押して調理場へ行った。

「もう、ティベリアは恥ずかしいことをして。もう…//」

お嬢様はぶつぶつと独り言を呟いていた。


寂しくなるとついやってしまう私の癖

「ナユ様なんですか?

 可愛いことして甘やかしてほしいんですか?」

私は寂しくなると、エスニルの燕尾服の裾をつまんでいる。

「べ、別になんでも無いわ。

 たまたまつまんでしまっただけよ」

私はつまんでいた裾を離した。



「僕は今から街に出てきますね」

エスニルは私に一言言って街へ出る準備をしに部屋へ戻って行った。

「さて私も準備しましょうか」

チリンとベルを鳴らし使いを呼んだ。

私も街へ出る準備をして玄関へ向かった。



「あれ?ナユ様。どこかへお出かけですか?」

エスニルは準備を終えゆっくりと出てきた。

「私もエスニルについて行くわ。

 特に問題は無いでしょう」

私はエスニルに詰め寄った。

「ナユ様、勝手な事しないでくださいよ」

エスニルに釘を刺された。

「勝手な事なんてしないわ、大丈夫よ」

私はエスニルのの目を見て言った。

「では勝手なことはしないと、

 約束をしたことですし街に行きますか」

エスニルと私はカバンを持ち、玄関を開け街へ出る。


俺は仕立てた燕尾服を着て雪を惚れさせる

「零は今日もまた執事ごっこですか?」

雪はやれやれと言った感じに聞いてきた。



「違うよ、これはお試しの燕尾服だ」

俺は腰に手を当てて言った。

「なぜ威張る必要があるんだ?」

雪はよくわからないと言った感じだった。

「こ、これは…なんとなくだ」

俺は恥ずかしくなった。

「今更、何恥ずかしがってんの?」

ふふふと悪そうな顔をしていた。



「今日は燕尾服を仕立ててもらっていた」

俺は燕尾服の入っていた袋と箱などをかき集めた。

「それで今日は午後から外に出ていたんだね」

なるほどと言ったように納得していた。

「どう?似合ってる?」

俺はもう一度雪に見せた。

「似合ってるよ、零。かっこいいんじゃないかな」

雪は下から上に視線を動かしていた。

「隅々まで見てくれて良いんだよ雪」

俺は機嫌良く回転していた。

「そんな、はしゃぐなよ。燕尾服に皺ができてしまうよ」

雪は注意をしてくれていた。

「それはダメだ。まだ劣化するのはダメだ」

俺は回転をやめ、雪の方へ向き直す。


外出前の準備が苦手なメアお嬢様

「リティロ!リティロ!街へ行くわよ」

唐突にお嬢様に言われた。

「メアお嬢様、慌ててどうしたんです?」

私はお嬢様に落ち着くように促した。



「リティロ、どうしましょう。髪がまとまらないわ」

お嬢様は櫛やアクセサリーを持ち私のところへ来た。

「私がまとめますので、鏡の前に座ってください」

私はお嬢様の持っていた物を預かった。

「リティロよろしく頼んだわよ」

お嬢様は座り鏡越しに目を合わせ頼まれた。

「かしこまりました。可愛くしますね」

私は櫛を手に取り、お嬢様の髪をとかし始めた。



「すごいわ、どんどんまとまってきたわ」

髪のまとまりにお嬢様は感動していた。

「毎度、感動していただきありがとうございます」

私は会釈した。

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